第55回読売文学賞受賞
沼野充義 著
本体3,800円
ISBN 4-87893-537-5 発行2003.02

古来、人類はこの地球上のどこかに存在するであろうユートピアを求め続けてきた。そして、二〇世紀にいたって、ようやくその夢が叶うかにみえた。差別のない平等な世界をスローガンに掲げた社会主義国の誕生である。しかし、ユートピアの本来の意味、「どこにもない場所」が示すごとく、それは儚い夢にすぎなかった。ユートピアの実現どころか、そこで行われたのは、イデオロギーの支配者がユートピア的想像力をも独占するという事態だった。そして皮肉にも、ザミャーチンの『われら』、ブガーコフの『巨匠とマルガリータ』といった反ユートピア文学の傑作が生まれることになる。
この二〇世紀文学が奇しくも直面した、ユートピアと反ユートピアの確執を中軸に、ロシアの「SFの父」ツィオルコフスキー論、ロシア・フォルマリズム論、独特のファンタジー世界を創造したポーランドの哲学者コワコフスキ論など、二〇世紀文学におけるユートピアの意味を根底的にとらえた力作評論集。
『亡命文学論』(サントリー学芸賞受賞)に続く、「徹夜の塊」第二弾!

【沼野充義】
1954年生まれ。東京大学文学部助教授。ペレストロイカ以降の、現代ロシア文学、東欧文学を精力的に翻訳・研究・紹介し、この分野の第一人者として活躍中。主な著書に『屋根の上のバイリンガル』、『モスクワ・ペテルブルグ縦横記』、訳書にブロツキー『大理石』、『ナボコフ短篇全集1』『ナボコフ短篇全集2』(共訳、作品社)他。