第53回毎日出版文化賞
この1年間の国内の出版物を代表する優れた作品の中から第53回毎日出版文化賞(特別協力・大日本印刷)の受賞作5点が決まりました。受賞図書と著者の横顔、選考委員の推薦の言葉を紹介します。
企画部門
『日本の名随筆』(全200巻)
和田肇企画 作品社刊
選考委員の推薦の言葉
豊かな文学域提示
永遠に続くかとおもわれていた作品社の「日本の名随筆」シリーズが、全二〇〇巻で完結した。その第一巻は、一九八二年十月の刊行であるから、十七年の年月をけみしたことになる。
このシリーズは、第一巻「花」が宇野千代編ではじまり、以下、「鳥」、「猫」、「釣」、「陶」……というように、当初は花鳥風月的な色彩の濃いものであった。それが最後は……「昭和」、「歴史」、「聖書」(田川建三編)というように、テーマが歴史や政治や宗教にまで及んだ。
そのことによって、随筆というジャンルがきわめて広い領域と、長い伝統をもった、豊かな文学域であったことを、わたしたちに認知せしめた。エッセーといえば、モンテーニュの随筆ふうな重い思索か、もしくは軽い身辺雑記か、と決めつけているわたしたちの潜在的な観念を破って、まず文章の実例として展示してくれた、すぐれた企画であった。
(松本健一)